平成二十五年中学生の夏(十五歳の夏海)

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そんなおばぁの優しい笑顔を眺めていると不安な気持ちはどこかに吹き飛んだ。わたしは自分を信じて夢に向かおうと思った。 この日の夜は嬉しくて幸せな気持ちで眠りについた。 そうなんだけれど……。夢の中にわたしかなと思われる女性が出てきた。 わたしを大人にしたような女性なのでびっくりした。 『オーディションを受けないで』 その女性は顔を歪めそう言ったかと思うと手に持っている封筒をビリビリと破いた。 あ! あの封筒はオーディション結果の通知の封筒ではないか。 夢の中のわたしは『破かないで~』と叫んだ。 だけど、わたしとよく似た女性は首を横に振りビリビリビリビリと封筒を破り続けた。 これは夢だと分かっているけれど悲しくて苦しくて、『破かないでよ~』 わたしは叫んだ。 それなのに封筒はビリビリビリビリと無残にも破かれただの紙くずになってしまった。
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