二十三歳の夏海(2)

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わたしはスーツケースを物置から出した。 そして、クローゼットの中から適当に服と下着を出しスーツケースの中にぽんぽんと詰めた。 それから鞄の中にスマートフォンと千円札が一枚しか入ってない財布を入れた。 「沖縄に帰ろう」 わたしは鞄を肩にかけスーツケースをころころと転がしマンションを出た。 もう女優として活躍する夢なんて見ない。わたしは沖縄に帰り平凡な人生を歩むんだ。そうしよう。そうした方がきっと両親も喜んでくれることだろう。 もう東京(ここ)には未練なんてない。 わたしは、東京の空を見上げ涙が零れそうになるのをぐっと堪えた。 そして、わたしはゆっくりと歩き出した。
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