二十三歳の夏海(2)

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山手線で品川駅まで行き京急線に乗り換え羽田空港へと向かう。 わたしは、なけなしの四万円を銀行のATMで引き出し急いでスマートフォンで羽田空港から那覇行きの航空券を予約した。 突然実家に帰ると両親はびっくりするだろうな。お父さんなんてどうしたんだ夏海と言ってあわあわしそうだ。 そんなお父さんの姿を想像するとおかしくてわたしは電車の中にもかかわらずクスッと笑ってしまった。 わたしには帰る場所があるではないか。これって幸せだよね。 そんなことを考えながら電車を乗り継ぎ羽田空港に到着した。自動販売機でお茶を買い、それから搭乗手続きを済ませ飛行機に乗った。 飛行機の窓から景色を眺めた。東京のビル街が小さくなっていく。初めてこのビル街を見た時はワクワクしたのに今は違った気持ちで眺めている。 さようなら。わたしの夢と希望。心の中でわたしは手を振った。
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