二十三歳の夏海(2)

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わたしは、スーツケースをころころ転がし今日泊まる宿を探していた。 島に帰るフェリーは一日二往復の運航しかないのだ。一日泊まるだけなので適当なビジネスホテルでいいなと思いスマートフォンで今日宿泊できる宿を検索する。 このビジネスホテルでいいやと思い予約へ進むボタンを押そうとしたその時、足元にふわふわの何かがスリスリしてきた。 わたしが足元に目を向けると可愛らしいオレンジ色の毛色を持つ茶トラ猫がいた。 「あ、猫ちゃんだ。可愛いね」 わたしはしゃがみ茶トラ猫の頭を撫でようとした。 すると、茶トラ猫はわたしの顔をまん丸おめめで見上げたかと思うとサーッと逃げた。 「あ、もう! せっかく撫でてあげようと思ったのに~」 でも、あの茶トラ猫とどこかで会ったことがあるような気がした。 きっと気のせいだと思いわたしは、ホテルの予約ボタンを押した。
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