平成二十五年沖縄の夏(中身は二十三歳の夏海)

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わたしは十五歳の頃からあの猿や子犬みたいな海助君のことが好きだったんだな。 日記帳には海助君と真美ちゃんと一緒に行った海のことが書かれていた。 『海助君はわたしからハイビスカス柄の浮き輪を受け取りぷうーと膨らませた。鼻から大きく息を吸い口をすぼめて息を吐く。一生懸命浮き輪を膨らませている海助君を見ているといいなと思った』 『海助君と別々の高校に行くのは辛いけれど、夏海ちゃんなら女優になれるよと言ってくれたその言葉が励みになった』 『海助君に女優になったわたしの姿を見てもらいたい。海助君だったらきっと、夏海ちゃん可愛いね、頑張っているねと言ってくれるだろう』 わたしの十五歳の頃の気持ちが日記帳の中に溢れていた。 だけどね、女優になっても仕事なんてないんだよ。それから、海助君はショートヘアがよく似合う女性と歩いているんだよ。 だからね夏海女優になるオーデションなんて受けないで沖縄本島の学校に行こうよ。 わたしは過去の自分向かって叫びたい。 過去を変えるとこれから先の未来は変わっていくのだろうか。 それはまだ分からないけれどわたしは女優にならない未来を選びたい。
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