平成二十五年中学生の夏(十五歳の夏海)

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わたしは学習机の引き出しを開けて猫柄の日記帳とペンを取り出した。 日記帳を開き、オーディションを受けると力強く書く。だけど、なんだか嫌な気持ちがじわじわと湧き不安になり心がざわざわする。 わたしはペンを置き、全身鏡の前に立ちにっこりと笑う。そして、「わたしはオーディションを受けて女優になる!」と声に出してみる。 先ずは書類審査に受からなければならないけれど、受かると信じてわたしが可愛くて魅力的に見える表情の練習をする。 不安な気持ちなんて気にしない。そうだ、オーディションの書類を今すぐ送ろう。 わたしは、鍵付きの引き出しに大事にしまっていたオーディションの書類を取り出した。 書類をぎゅっと掴み部屋を出た。
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