平成二十五年中学生の夏(十五歳の夏海)

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わたしはおばぁの明るくて優しい笑顔に見送られ軽い足取りで歩く。ついでに鼻歌もランランランと歌ってしまったのだ。 わたしは朱色の丸型ポストの前に立つ。 オーディションの書類を持つ手にも力が入る。 「どうかわたしの夢が叶いますように」 わたしは願いを小さな声で呟きお願いした。そして、ポストの真ん中にある投函口に夢が叶いますようにと心の中で唱えオーディションの書類を投函した。 すると、ポトンという音が聞こえた。なんだかドキドキしてきた。もう後戻りはできない。オーディション事務所にこの書類が届くのだ。 わたしの心臓はドキドキしてきた。 オーディションの書類を投函しただけでこんなにドキドキするなんて、もしオーディションに受かることがあれば心臓が壊れてしまうのではと思うとなんだか可笑しくなった。
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