平成二十五年中学生の夏(十五歳の夏海)

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家には走って帰った。 わたしは玄関の引き戸を開けて、「おばぁ~オーディションの書類を出してしまったよ~」と大きな声で叫んだ。 襖を開けおばぁがにょきりと顔を出した。 「夏海ちゃん、夢への第一歩だね」 おばぁはとびっきりの笑顔を浮かべた。 「うん、わたし勇気を出したよ。受かるか分からないけどチャレンジしなければ何も始まらないもんね」 わたしもにっこりと笑った。 それから、自室に戻り学習机から猫柄の日記帳を取り出した。 わたしは、日記帳に『オーディションの書類を出したよ』と書いた。 自分の書いた文字を眺めているとやる気がメキメキと湧いてきた。 なんとなくこのオーディションに受かるかもしれないと思えてきた。だけど、それと同時に不安な気持ちになってきた。 やっぱりなぜだか嫌な気持ちが湧いてくるのだった。やる気はあるのにこの気持ちはなんだろうか。
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