二十三歳の夏海(3)過去と未来が交わる

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夏海はわたしの顔をじっと見てそれから、 「あははっ! 夏海さん、ちょっと笑わせてくれているんですか? 夏海さんが、わたしってなんですかそれ……」 どうやらわたしの言ったことを夏海は信じていないようだ。まあ、言ったわたし自身何を言っているんだと思うけれど。 夏海は口元に手を当てて笑っている。これは絶対に信じていない。 「夏海ちゃん」 「はい」 「わたしの言ったこと信じていないの?」 「だって、夏海さんがわたしってそんなこと有り得ないですよね」 確かに夏海の言う通りだけど、どこからどう見ても目の前にいる夏海はわたしなんだもん。 ショッキングピンクの生地に猫が舌を出して笑っている絵柄がちょっとダサいTシャツを昔は好きでよく着た。ツインテールも好きだったな。 「夏海ちゃん、あなたはやっぱりわたしだよ」 わたしは夏海の顔をまっすぐに見つめた。 沖縄の優しい風がふわりと吹いた。
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