二十三歳の夏海(3)過去と未来が交わる

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わたしの顔を見返した夏海とわたしは見つめ合う。幼い日の自分と見つめ合っているなんて不思議な感覚だ。 澄んだ綺麗な目がわたしを見ている。そのキラキラと輝く夏海の目に今のわたしはどのように映っているのだろうか。 夢も希望も持てないわたしになりたかったわけじゃない。今でも夏海あなたと同じ綺麗な目で夢を追いかけ続けたかった。 だけど……。 わたしの毎日は辛くて夢なんて追いかけたくても毎日生活することで精一杯だった。 だからもうこんな辛い思いはしたくない。夏海あなたも叶わない夢なんて追いかけないで……。 「夏海さんってやっぱり変ですよ~鉄棒にぶら下がったままわたしをじっと見つめているなんて」 クスッと笑う夏海に言われて自分が鉄棒にぶら下がったままであることに気がついた。 わたしは、鉄棒からぴょんと飛び降りた。 そして、わたしは……。 「夏海ちゃん、夢を追いかけないで」と言った。
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