二十三歳の夏海(3)過去と未来が交わる

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「えっ? 夏海さん……夢を追いかけないでってそれはどういうことですか?」 夏海はぽかんと口を開けわたしを見ている。 「夏海ちゃんはオーディションに合格するけど、その後がうまくいかないんだよ。だからオーディションなんて受けないで!」 わたしは夏海の目をしっかり見て訴える。 夏海はぽかんと開けていた口を閉じ、 「意味が分かりませんけど」と言った。 「夢は叶った後が大変なんだよ。一生懸命頑張っても辛い毎日が待っているんだよ」 十五歳のわたしにこんなことを言うなんて酷だけど。だけど、どうしても分かってほしい。分かってほしいんだよ。だって、今のわたしは毎日が辛いのだから。 「……夏海さんって本当にわたしなんですか?」 夏海はわたしの目を真っ直ぐと見て言った。 「うん、そうだと思うよ。だって夏海ちゃんはわたしそのものだもん」 わたしだって信じられないけれどどこからどう見ても目の前の夏海はわたしなのだから。
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