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プロローグ
「お腹が空いた~」
生まれ故郷である沖縄の離島に着くなりわたしの口から飛び出したのがこの言葉だった。
亜熱帯地方独特の風が吹き懐かしさが、きゅーと胸に込み上げてくる。けれど、今はそれどころではない。とにかくお腹が空いたのだ。
早く懐かしい家に帰ろう。そう思いスーツケースを転がそうとしたその時、鼻腔をくすぐる煮物の良い香りがふわふわと漂ってきた。
美味しそうな匂いだ。わたしは、その匂いに誘われるかのようにふらふらと歩きだした。すると、
「ようこそ~まりみどカフェ食堂へ」
「わっ! なんですか?」
わたしの目の前に丸顔で目がくりっとした可愛らしい二十代前半くらいであろうかなと思われる女性が満面の笑顔を浮かべて立っていた。
「お腹空いてるでしょう?」
なんて突然ニコニコ笑いながら言うのだからびっくりする。
「え? どうしてそれを知っているんですか?」
わたしが首を横に傾げながら尋ねると、その女性は、
「だって、お腹がグーグー鳴っていますよ~」と言ってわたしのお腹を指差す。
「……あ、えっ? あ、あはは」
わたしはお腹を押さえて照れ笑いを浮かべた。恥ずかしい。
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