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(しかし、この受付の小さなお姉さん、猫耳で長い尻尾がフリフリしてるけど、コスプレヤーなのか?)
「さあ、逮捕される覚悟があるならさわってごらん」
ドヤ顔の小さな猫耳お姉さん。
「ビリッ!とかしませんか?」
「しないしない」
「じゃあ、はい」
ピトッ
勤は石版に手をついた。
「お兄さん、馬鹿なの? 謝って帰れば逮捕されないのに。まあ、私は報奨金で1万円もうかるけどね。私を恨まないでね。あ、言っとくけど、ギルド職員に逆恨みパンチとかしたら死刑だから」
「あの、それで結果は?」
「仕方ないわ。そこまで言うなら国のメインサーバーにアクセスするから。ここをタッチして、ここを指定して、ここをこうだったわね。滅多に使わないから。はい、繋がった。えっと……職業、バイトリーダー。ほら、お兄さんはバイトリーダー……えええのえー!!」
「これで俺がバイトリーダーって分かるって、凄いシステムですね」
「あわ、あわわわわ。す、す、すみませんでした!!」
受付のほうから飛び出して土下座する小さな猫耳お姉さん。尻尾はブルブルしている。
「あの」
「ん? どうした、ネマル。何か粗相でもしたのか? それにしたって土下座はねえだろ」
「バカ野郎! クソ野郎! おっさんも土下座して謝れ! 殺されるぞ! コノヤロー! 化け物なんて連れてきやがって! あっ! 化け物なんて言って、す、す、すみませんです!!」
ゴン ゴン ゴン
何度も床に頭を打ち付ける小さな猫耳お姉さん。
「お姉さん、頭が割れるから止めて」
「は、はい! 御命令ですね!」
床にゴンゴンを止めた小さな猫耳お姉さん。
「おい、ネマル。これはどんな状況なんだ?」
「おっさん! そこの石版を見てみろ!」
「あ? 職業はなんだったん……はあ!? す、す、すみませんでした!」
ゴン ゴン ゴン
勤の前に土下座して床に頭を打ち付けるゴツいおっさん。
何だよ、これ。
「マカロンさん、ゴンゴンはやめてください」
「俺の名前はマクロン……いえ! はい! マカロンやめます!」
「えっと……」
「腕の1本くらいは覚悟しました! どうか命だけは!」
「どういう意味?」
「殺さないでください!」
「そんな事、俺はしないけど」
何でこの流れで俺が人を殺すんだ?
「分かりました。自分でやれと。マカロンやります!」
ボキ!
「へ?」
「グッ。こ、これでネマルの無礼もお許しを」
「お、おっさん。私の為に……」
「な、なに。ネマルには世話になってるからな」
「おっさん」
「バカ野郎! 何をしてんだよ! 救急車を早く呼べよ!」
「きゅうきゅうしゃ? ヒーラーのことですか? ヒーラーは高いんですよ。こんなの唾をつけとけば治ります」
「治らねえよ!」
「ホームセンター様、バイトリーダーのお力でおっさんの腕を治してもらえませんか? 十分に痛い思いをしてます。すごく反省してますから」
「俺が? どうやって?」
バイトリーダーのお力でって、俺は医者でもないからな。
「いえ。こう、普通に腕を触って『治れ!』とか気合を入れたら治ると思いますが」
……まあ、ここは夢の中。やればできるんだろうな。恥ずかしいけどな。俺は中二病か? やったら『あ、中二病だ!』とか笑うのか?
勤はマカロンさんの腕を触った。
「治れ!」
ピカッ
「わっ!」
「うおっ」
「まぶしい!」
「ホームセンター様、ありがとうございました! ほら、おっさんも御礼」
「あ、治った。ありがとうございました!」
「え?」
さっきまで折れていた腕をぐるぐる回すマカロンさん。
流石は夢の中だ。折れた腕を触って「治れ」と言っただけで骨折が治りやがった。これ、整形外科医は廃業だぞ。
「それで、その、バイトリーダーのホームセンター様が、この小さなギルドに何の用ですか?」
「ネマル。ギルド本部の覆面調査に決まってるだろ。抜き打ち」
「はう! わ、わ、私の失礼で無礼な受付対応を本部やお国に言われたら!」
「ネマル、お前、懲役10年ですめばラッキーだな」
覆面調査か。ホームセンターでもたまに来てたな。あからさまに普通は聞かれないような質問をされるから、覆面と言ってもバレバレなんだが。
夢の中だし、芝居をするか。
「そう。俺は国から依頼を受けた覆面調査官だ」
「ほらな」
「あわわわわ!」
「しかし、このギルドの空気感は気に入った」
「「え?」」
「新人候補とか言ってたが、新人を募集してるのか?」
「えっと……まあ、ここはギルドなので、随時希望者は受け入れてますけど。あ、適性検査はちゃんとしてます!」
「そうか。俺も適性検査を受けれるかな?」
「あばばばばば! と、と、とんでもないです! 今の骨折ピカッと治しで完全合格でございますです!」
「なら、この……ギルド?」
「はい。ギルド小猫でございます!」
「ギルド小猫?」
「小猫族でやってる小さなギルドです」
「俺は猫、好きなんだ」
「ありがとうございます」
「その設定、気に入った」
「え?」
「国の仕事は辞めて、このギルド小猫で働く」
「はあ?」
「ま、マジっすか? あ、す、すみません!」
「マジで」
「ありがとうございます!」
小猫族か。いい設定だな。自分のみてる夢の中と思ってる勤は自分で自分を褒めるのだった。
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