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お昼ごはん
マンション10階の部屋から外を眺める勤。
「近くに建物がないな。ぽつんとマンションだ」
しばらく休んで1階のギルドへエレベーターで降りる。
「昼ごはんを食べる店も近くにないんだな」
夢の中で食事が必要か知らないが、お腹は空いてきた。
「あ、そうです。ここは町の外れの不便な場所なので」
「と、すると。お前らは昼はどうしてるんだ?」
「猫缶を」
「なるほど」
俺は猫缶は食べないからな。弁当でも出すか。
勤は高級とんかつ弁当と豚汁、ペットボトルのお茶を出現させた。
さて、食べるか。
「うん、流石は高級弁当だな。美味い」
パクパクと食べてると、マカロンの視線を感じる。
「マカロン、お前は猫缶を食べないのか?」
「他に何も無いなら食べますけど」
食べるのかよ。
「けど?」
「兄貴が食べてるのを食べたいなーと」
「金は?」
「持ってません」
お前な。まあ、タダで出せるから良いか。
安いとんかつ弁当とみそ汁を出現させた。
「ほら、食べろよ」
「えっと……兄貴のと違うような……」
「バイトリーダー様と同じ食事をしたいのか?」
「あ、いえ、すみません。いただきます! うおっ! 美味しいです!」
ガツガツ食べるマカロン。
気持ち良い食べ方だな。おかわりを出しておくか。
「おかわりは有る。ゆっくり食え」
「ありがとうございます!」
同じペースでガツガツ食べるマカロン。
俺はゆっくり食えと言ったんだかな。
「おかわりお願いします」
「ほら」
「ありがとうございます」
「おかわり、お願いします」
「ほら」
「おかわり」
「ほら」
マカロンは10回のおかわりをした。
「もう食べれません」
「……だろうな」
「おっさん、稼いだ金は全て食事に使ってるんです」
「なるほど」
これだけ食べたら家を借りる金なんか残らないな。
「兄貴。これだけ美味いものを食べたら思い残す事は無いです」
安いとんかつ弁当10個で思い残す事はないか。安い人生だったんだな。
「マカロン、食事は全て俺がタダで出してやる」
「いいんですか!?」
「その代わり、このギルドで真面目に働けよ。新人が入るまでは1番下っ端だからな」
「頑張ります」
「新人のほうが優秀なら、ずっと下っ端だからな」
「兄貴、俺はそこらへんの奴らになんか負けません」
「なら良いがな」
「はい」
「あの、ホームセンター様」
「何だ」
「ホームセンター様が激ウマにしてくれた猫缶を食べてもいいですか?」
「全部食べても赤字にはならないから食べたらいいだろ。遠慮するな」
「「ありがとうございます」」
いや、別に激ウマ猫缶は俺の物じゃないが。
「あ! すっごくいい匂い! 頂きます。ブニャッ!! お、お、美味しすぎる!!」
「ブニャ! て、て、天国にも行ける味にゃー!」
次々と激ウマ猫缶を開けて食べる小猫族姉妹。
10缶ずつ食べてストップした。
「あ、気がつけば10缶も! やだー。太っちゃう!」
「激ウマすぎが悪いんだー!」
「お前ら……」
いくら美味しくても3缶くらいで止めとけよな。その小さな身体のどこに入ったんだ?
・・・・・
「このギルド小猫の登録メンバーは何人なんだ?」
「あの……父さんが代表の時は小猫族が5人いたんです」
「みんな辞めたのか?」
「はい。父が運転資金を使い込み、給料を払えなかったので。まだ、その時の給料を私達姉妹が分割で支払ってます」
「それは大変だな。運転資金を使い込むまでは、どんな仕事をしてたんだ?」
「主には、小猫族好きなお金持ちの家に小猫族を派遣する仕事ですね」
「それが国からの委託なのか?」
「人族が小猫族を家に派遣してもらうには、国の許可がいるんです。国に申し込んで審査が通ったら、小猫族派遣ギルドに国から派遣依頼がくる仕組みです」
「なるほど。人族の家に派遣されて、小猫族は何をするんだ?」
「可愛い服を着せられて写真撮影とか、家の中で遊ばせて可愛い仕草を鑑賞するとかですかね」
「なるほど。小猫族好きな人族には、それがたまらない訳か」
「みたいですね」
「1回の派遣でいくら貰えるんだ?」
「人族が国に払った額の80%が派遣ギルドに。派遣ギルドは手数料で20%をもらいます」
「ややこしいな。時間単位なのか?」
「基本、鐘1つの時間で2万円ですね。なので、その場合はギルドがもらえる手数料は3,200円になります」
「小猫族を1日5人派遣したら16,000円か。経営的には大変かもな」
「常に派遣はされませんからね。人気のない小猫族もいますし」
「だろうな」
「まあ、小猫族の食事は主に猫缶ですし、あまり食べないので食費は安いです。なので、なんとかやってます」
「こんなに食べるのにか?」
空き缶20個を指差す勤。
「あ、これは美味しすぎたので……」
「今日、姉さんは朝から派遣されてたんです」
「なるほど。早朝派遣か」
「はい。可愛く起こしてくれとの依頼でした」
「猫に可愛く起こされる。なるほど」
「しつこく時間延長を頼まれて大変でした。延長してもお金は貰えないのに」
「時間延長はサービス残業なのか?」
「そうなんですよ」
「まあ、仕事は何でも大変だからな」
「そうですよね。ホームセンター様もですか?」
「こう見えて大変な事もある」
「何でも簡単にできそうですが」
「頂点に登らないと見えない事もあるからな」
「なるほどー」
「兄貴、格好いい! メモしときます」
マカロン、どこにメモしてるんだ? 紙もペンも持ってないが。
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