1級国民ですけど、何か?

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1級国民ですけど、何か?

異世界転生には莫大な生命エネルギーが必要。溜口勤の異世界転生にも莫大な生命エネルギーが使われた。 その仕組みは、溜口勤が地球で死亡する原因を作った人間と、その身内や子孫全員の寿命を半分にする事でまかなわれる。 溜口勤がバイトリーダーをしていたホームセンター高木の主任、喧嘩をしていたバイト2人。この3人の身内、子孫は全て寿命が半分になるのだ。 溜口勤がチート能力を使うのにも対価は必要。この世は全て等価交換だから。 ホームセンター高木の主任、喧嘩をしていたバイト2人。この3人の身内、その子孫は全て生涯収入が半分になる。人類滅亡までの生涯収入の半分だから、その金額は天文学的金額。 勤が出現させたマンションや弁当、激マズ猫缶を激ウマ猫缶に変えた力も、その全ては地球の3人の身内や未来の子孫から没収される金を対価としているのだ。もちろん、そんな事は勤は知らないが。 ・・・・・ ギルド小猫 「激ウマ猫缶、販売しないのか?」 「私達姉妹が食べます」   「20万個全部?」 「「はい」」 「激ウマ猫缶を販売しなくて、俺の月給30万円は払えるのか?」 「「あ」」   あ。って何だよ、考えてないのかよ。 「俺は考えた」 「何をですか?」 「お前ら、小猫族派遣ギルドは廃業しろ」 「「ええ!? 私達に死ねと!」」 言ってないだろ、そんな言葉。 「例えばだ。すごく安い1個50円の猫缶を仕入れて、俺が物質変換で超激ウマ猫缶に変える。パッケージも変えるからな。それを1個500円で売れば」 「「1日100個売れたら45,000円の大儲け!」」 「そうだ。すごく不味くてすごく安くて硬い肉を」 「すごく美味しくて柔らかい肉に変えて売ったら大儲け!」 「そうだな。ここをスーパーにしろ」 「「スーパー?」」 「物を売る店の事だ」 「あの、小猫商店では駄目なんですか?」 「それは好きにしろ」 「でも、このギルドは不便な場所に建ってるので、商店にしてもお客様が来るかどうか」 「みんな、移動はどうしてるんだ?」 「移動とは?」 「少し遠くに……例えば10キロ先へ用事に行く時とか」 「歩くしかないですね」 「乗り物はないのか?」 「ん? 乗り物?」 車とかバイクとか無いんだな。 「分かった。送迎バスを出すから。完全自動運転の」 「よく分かりませんが、分かりました」 「まあ、見れば分かる」 勤は30人乗りの完全自動運転電動バスを出現させた。 ついでに運転席に座らせておく男型アンドロイドも。   「はー。これがバスですか」 「そうだ。ん?」 「え?」 「道が凸凹だな」 「そうですね」 「これではバスは走れない。町の中心まで……この町の主な道をバスが走れるような硬い道に変える。誰に許可をもらえばいいんだ?」 「町長ですね」   「案内しろ」   「町の中心部……役場まで3キロ歩きますけど」 「楽勝だな」 「なら、案内します。おっさん」   「ん?」 「ん? じゃなくて、そんなのは下っ端の仕事よ」 「あ、分かった」 「それくらい、『俺が案内します』ってすぐに言わないと、ずっと下っ端だよ」 「あ、おう」 「マカロン、案内しろ」 「はい、兄貴」 ・・・・・ 「ここが役場か。小さいな」 「兄貴のマンションに比べたら、この町の建物は全て小さいですよ」 「まあ、町長に会いに行くか」 「はい」 受付けで尋ねる勤。 「町長に用があるんだが」 「面会のお約束はされていますか?」 「してないけど」 「では、予約をお願いします」 「予約したら、いつ会える?」 「あの、一応確認しますが、紹介状とか持ってませんよね?」 「持ってない」 「失礼ですが、御身分は?」 「御身分?」  手をあげるマカロン。 「マカロン、どうした?」 「兄貴、忘れたんですか?」 「何をだ?」 「この国では身分制で、1級国民から10級国民に別れてます」   なるほど。身分で差別されるのか。 「忘れてた」 「まあ、兄貴は1級国民ですもんね」 「マカロンは?」   「俺は9級です」 「ぷっ、くくくっ」 笑う受付のお姉さん。 「何がおかしい?」   「ぷぷっ。あのね、君。1級国民は超高額納税者とか国に超貢献した人だけよ」 「それが?」 「1級国民だとか嘘を言ってたら逮捕されるから気をつけてね」 「バイトリーダーは1級国民じゃないのか?」 「そうだけど? それが?」 「なら、俺は1級国民だ」 「……あのさー。君ね、本当に逮捕されるよ」 手をあげるマカロン。 「何だ、マカロン」   「発言しても良いですか?」   「いいぞ」 「受付の姉さん、俺は口が悪いが気にしないでくれ」   「え?」   「ホームセンター様は本当にバイトリーダーだ。早く謝れ。殺されるぞ。まあ、俺には関係ないけどな」 「マカロン、俺がすぐに人を殺すみたいに言うな」   「あ、すみません」 「……警備員を呼びます」   「「あ?」」 「キャー! 助けて! 殺される〜!」 「だから、俺はそう言ったぞ」 「おいおい」 「床に大の字になれ! 抵抗するな!」 男の職員やガタイの良い男達に囲まれた。 「早くしろ!」   「マカロン、こいつらは俺に言ってるのか?」   「そうみたいです。死にたいんですかね?」 「いや、別にこれくらいで殺してたらキリがないだろ」 「兄貴は世界最強のバイトリーダーなのに心が広いですね。あっ、世界最強だからですか。なるほど」 「まあ、何も怖いものはないからな」 「あ、名言。メモしときます」    お前、字は書けるのか?
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