10人が本棚に入れています
本棚に追加
1級国民ですけど、何か?
異世界転生には莫大な生命エネルギーが必要。溜口勤の異世界転生にも莫大な生命エネルギーが使われた。
その仕組みは、溜口勤が地球で死亡する原因を作った人間と、その身内や子孫全員の寿命を半分にする事でまかなわれる。
溜口勤がバイトリーダーをしていたホームセンター高木の主任、喧嘩をしていたバイト2人。この3人の身内、子孫は全て寿命が半分になるのだ。
溜口勤がチート能力を使うのにも対価は必要。この世は全て等価交換だから。
ホームセンター高木の主任、喧嘩をしていたバイト2人。この3人の身内、その子孫は全て生涯収入が半分になる。人類滅亡までの生涯収入の半分だから、その金額は天文学的金額。
勤が出現させたマンションや弁当、激マズ猫缶を激ウマ猫缶に変えた力も、その全ては地球の3人の身内や未来の子孫から没収される金を対価としているのだ。もちろん、そんな事は勤は知らないが。
・・・・・
ギルド小猫
「激ウマ猫缶、販売しないのか?」
「私達姉妹が食べます」
「20万個全部?」
「「はい」」
「激ウマ猫缶を販売しなくて、俺の月給30万円は払えるのか?」
「「あ」」
あ。って何だよ、考えてないのかよ。
「俺は考えた」
「何をですか?」
「お前ら、小猫族派遣ギルドは廃業しろ」
「「ええ!? 私達に死ねと!」」
言ってないだろ、そんな言葉。
「例えばだ。すごく安い1個50円の猫缶を仕入れて、俺が物質変換で超激ウマ猫缶に変える。パッケージも変えるからな。それを1個500円で売れば」
「「1日100個売れたら45,000円の大儲け!」」
「そうだ。すごく不味くてすごく安くて硬い肉を」
「すごく美味しくて柔らかい肉に変えて売ったら大儲け!」
「そうだな。ここをスーパーにしろ」
「「スーパー?」」
「物を売る店の事だ」
「あの、小猫商店では駄目なんですか?」
「それは好きにしろ」
「でも、このギルドは不便な場所に建ってるので、商店にしてもお客様が来るかどうか」
「みんな、移動はどうしてるんだ?」
「移動とは?」
「少し遠くに……例えば10キロ先へ用事に行く時とか」
「歩くしかないですね」
「乗り物はないのか?」
「ん? 乗り物?」
車とかバイクとか無いんだな。
「分かった。送迎バスを出すから。完全自動運転の」
「よく分かりませんが、分かりました」
「まあ、見れば分かる」
勤は30人乗りの完全自動運転電動バスを出現させた。
ついでに運転席に座らせておく男型アンドロイドも。
「はー。これがバスですか」
「そうだ。ん?」
「え?」
「道が凸凹だな」
「そうですね」
「これではバスは走れない。町の中心まで……この町の主な道をバスが走れるような硬い道に変える。誰に許可をもらえばいいんだ?」
「町長ですね」
「案内しろ」
「町の中心部……役場まで3キロ歩きますけど」
「楽勝だな」
「なら、案内します。おっさん」
「ん?」
「ん? じゃなくて、そんなのは下っ端の仕事よ」
「あ、分かった」
「それくらい、『俺が案内します』ってすぐに言わないと、ずっと下っ端だよ」
「あ、おう」
「マカロン、案内しろ」
「はい、兄貴」
・・・・・
「ここが役場か。小さいな」
「兄貴のマンションに比べたら、この町の建物は全て小さいですよ」
「まあ、町長に会いに行くか」
「はい」
受付けで尋ねる勤。
「町長に用があるんだが」
「面会のお約束はされていますか?」
「してないけど」
「では、予約をお願いします」
「予約したら、いつ会える?」
「あの、一応確認しますが、紹介状とか持ってませんよね?」
「持ってない」
「失礼ですが、御身分は?」
「御身分?」
手をあげるマカロン。
「マカロン、どうした?」
「兄貴、忘れたんですか?」
「何をだ?」
「この国では身分制で、1級国民から10級国民に別れてます」
なるほど。身分で差別されるのか。
「忘れてた」
「まあ、兄貴は1級国民ですもんね」
「マカロンは?」
「俺は9級です」
「ぷっ、くくくっ」
笑う受付のお姉さん。
「何がおかしい?」
「ぷぷっ。あのね、君。1級国民は超高額納税者とか国に超貢献した人だけよ」
「それが?」
「1級国民だとか嘘を言ってたら逮捕されるから気をつけてね」
「バイトリーダーは1級国民じゃないのか?」
「そうだけど? それが?」
「なら、俺は1級国民だ」
「……あのさー。君ね、本当に逮捕されるよ」
手をあげるマカロン。
「何だ、マカロン」
「発言しても良いですか?」
「いいぞ」
「受付の姉さん、俺は口が悪いが気にしないでくれ」
「え?」
「ホームセンター様は本当にバイトリーダーだ。早く謝れ。殺されるぞ。まあ、俺には関係ないけどな」
「マカロン、俺がすぐに人を殺すみたいに言うな」
「あ、すみません」
「……警備員を呼びます」
「「あ?」」
「キャー! 助けて! 殺される〜!」
「だから、俺はそう言ったぞ」
「おいおい」
「床に大の字になれ! 抵抗するな!」
男の職員やガタイの良い男達に囲まれた。
「早くしろ!」
「マカロン、こいつらは俺に言ってるのか?」
「そうみたいです。死にたいんですかね?」
「いや、別にこれくらいで殺してたらキリがないだろ」
「兄貴は世界最強のバイトリーダーなのに心が広いですね。あっ、世界最強だからですか。なるほど」
「まあ、何も怖いものはないからな」
「あ、名言。メモしときます」
お前、字は書けるのか?
最初のコメントを投稿しよう!