9人が本棚に入れています
本棚に追加
親切な人
1
「まず何する。蒼咲さん」
「物語ではさ、ここはどこかって探るんだったよね。そのとおりにしよう。親切な人がいたはず。」
「ねぇ蒼咲さんこれがもしあの小説ではなく他のどこかだったらどうするの。」
「分からないよ。そんなの。でもここは地球ではないところでしょう?どうしたらいいのよ」
「知らないよそんなの。」
とりあえず近くの人にここはどこかなどを聞くことにした。
「あのここはどこで西暦何年ですか?」
「ん〜とエルミニュカ王国西暦8863年だね。」
「……ありがとうございます。」
言葉が詰まった。物語に書いた通りのことだったからだ。
「嘘でしょ?」
「わからない。」
「ねぇ行崎さんどうするの?物語どおりに行動するかいきあたりばったりに行動するか。」
「そんなの知らないよ。勝手にしたら。」
「物語にかけよう行崎さん。」
「分かったよ。けどホントにそうしていいの?」
2
「えーと親切な人ってカーラさんって名前だよね。」
「うん。そう書いてある。」
「えっ物語持ってたの。」
「うんそうだけど。念の為持ってきたの。」
「ありがとう行崎さん」
「カーラさんはあの雑貨屋の店主だったはず。でもホントに行くの。罠かもしれないのに。」
「行こうよ。いいでしょ。」
「まあいいけど。」
3
「雑貨屋さんにはどうやって行く行崎さん。」
「不審者とかに襲われてやばいところでとか良いと思うけど。書いてある。事実を変えなくて良いと思うけど。」
「野良犬でやろうよ。せめて。」
「たしかに不審者待つのはきつい。」
「ねえ突っ込むのそこ?」
「…………………じゃあいこうか。」
「しかも無視」
なんかおかしくなってきて笑い出す。
「急に笑うの2回め。」
「それ今言う」
「……たしかに。」
「あ、蒼咲さんいい感じの野良犬見つけた。」
「ホントだ。」
その犬はいい感じに薄汚れてみすぼらしかった。(いい感じっていうのは抱きつかれたりタックルされたときに大丈夫そうってこと。)
4
「じゃあ計画実行しよっか。行崎さん」
計画とはほんとにずさんなものだ。野良犬を怒らせて、逃げながらカーラさんの家に駆け込むっていう設定だ。
「うんそうしよう。」
あちなみにカーラさんには野良犬に餌をやったで納得してもらうことにしている。
「じゃあ野良犬を少し怒らせるか。」
「だね。」
野良犬をなでて毛を少し引っ張ってすぐ逃げた。ぐるるるるるるる野良犬の唸り声が聞こえる。あのカーラさんの家まで後少し。ドアノブに手をかけた。後ろを見ると
「何やってんの。」
行崎さんが逃げ遅れて、野良犬に追いつかれそうだ。
「見てわかるでしょ。」
もう後始末が大変だ。行崎さんより私のほうが足速いし
「囮に私がなる。にげろ」
ああもうこんなことなるならもう少し安全な相手にすればよかった。完全に徒競走だ。
やっとドアノブに手がかかる。あっちはもう着いてるだろう。
「助けてください。」
「どうしたの」
カーラさんは大阪のおばちゃんみたいな容姿だった。
「野良犬に追われてたんです。あの友だちが来ませんでしたか。あの犬に友達と餌をやって離れようとしたら追いかけてきて。来ましたか。」
「あああの子ね来たわよ。」
「良かった。」
「ちょっと服がぼろぼろじゃない。どうしてそんなのなの。ちょっと旅してて。今日泊まる宿もないんです。」
「まぁ小さいのになんで。」
「親に17になったから出てけって言われて。」
「まぁたいへん泊まるとこないならうちに泊まる。空き部屋あるから。」
「ありがとうございます。本当にありがとうございます。」
「いいのよ。防犯上良いし。」
やった住むところゲットだ。もし無理だったら野宿だったんだよね。危なかった。
最初のコメントを投稿しよう!