運命のいたずら

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 ほどなくして担架を手にした救急隊員たちが到着した。春馬さんは美衣さんに付き添い、貴和子ちゃんと私は警察の事情聴取を受けることとなった。  こういうときに私の事情を知っている平塚刑事がいてくれると助かるんだけどなと思ったけれど、残留思念云々をすっ飛ばして話しても案外警察は納得してくれた。  美衣さんを捜して彼女のお気に入りの白兎海岸に行ったら、二人が倒れていた。私が話したのは事実だけだ。どちらが無理心中を図ったのかは、その場にいなかった第三者にわかるはずもないのだから。  警察署を出て美衣さんが運ばれた病院に駆けつけると、喜一さんと澄子さんが来ていた。  手術を終えた美衣さんは一命を取り留めたという。 「まさかこんなことになってるなんて……。貴和子ちゃんたちが捜してくれて本当に良かった。ありがとう」  集中治療室の前で澄子さんは涙を浮かべながら、私たちにありがとうを繰り返したけれど、喜一さんは一言も口を利かなかった。  父親として娘が瀕死の重傷を負ったことについて後悔がないわけがない。元哉さんとの結婚を反対したことも、駆け落ちだからと捜しもしなかったことも。  もしかしたら……喜一さんは薄々気づいていたのかもしれない。美衣さんの本当の父親が誰なのかということを。  だから、二人の結婚に猛反対したし、駆け落ちしたとわかると放っておいた。二人は腹違いの兄妹なのだから、元哉さんの母親が結婚に反対するのはわかりきっている。いっそどこか遠くの土地で何も知らないまま二人が幸せに生きていくことを、喜一さんは望んだのかもしれない。  幼い美衣さんを男手一つで育て上げた喜一さんに、親としての愛情がなかったはずがない。むしろ娘を愛するが故に、捜索をしなかった。  項垂れたままの喜一さんを見ていたら、そうとしか思えなかった。
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