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「春馬さんとは一度も会ったことはないけど、何度も話してるうちに性格とか考え方に惹かれたの。そういう恋もあるでしょ? で? 春馬さんはどこ? 空港に来てないの?」
私の語気の強さに彼女が怯んだように身体を仰け反らせたとき、「あ、優さん!」と慌てたように若い男性が駆け寄ってきた。
お互い、相手の顔は茅ヶ崎先輩が送信してきた写真でしか見ていないけれど、すぐに春馬さんだとわかった。色白の整った顔はお公家さんのように品がある。
春馬さんは照れた顔をしながら、私に手を差し出した。私たちは恋人同士だけれど、初対面だから握手ということらしい。私としてもいきなりハグは照れてしまうので、彼の手を握った。
「よく来てくれたね。ちょっと身内のことでバタバタしてるんで、観光案内は後にして家に戻ってもいいかな?」
「それはいいけど、春馬さん。この子があなたの許嫁って本当?」
そんなの初耳だし、今日は春馬さん一人で迎えに来るはずだった。
この子と一緒に観光しなきゃいけないなんてことになったら時間のロスだ。
「許嫁なんて親同士の冗談だよ。うちの母親と貴和子のお母さんが幼馴染だから、帰省する度に姉と三人で一緒に遊んでただけ。ただの友だち」
言った本人は貴和子さんが傷ついたような顔をしたことに気づいていないらしい。
鈍感なイケメンを幼馴染に持つと苦労するよね。
ついさっきまでいけすかないと思っていた貴和子さんが可哀想に思えてきたのは、同病相憐れむという奴かもしれない。
でも今はそんなことより、一刻も早く春馬さんのお姉さんの行方を捜さなくては!
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