恋する気持ち

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 春馬さんが貴和子ちゃんと一緒に空港まで送ってくれて、「ありがとう」の言葉と共にお土産に梨とらっきょうとを持たせてくれた。  あ、もちろん今回の報酬は私の交通費を含めて、薫ちゃんが春馬さんからしっかり現金で受け取っていた。  それにしても、砂丘らっきょうが美味しいのは知っていたけれど、とうふちくわというのは初めて聞いた。 「豆腐なの? 竹輪なの?」  飛行機のシートに座ってからの薫ちゃんの第一声がそれだったから、薫ちゃんも気になっていたのだろう。 「えっとね、『とうふちくわは木綿豆腐と白身魚のすり身を7:3の割合で混ぜ、蒸し上げて作られています』だって」  箱に書いてある説明を読み上げ、包みを開いてみる。 「へえ! ネギとかショウガ味もある」 「どれか食べてみる?」 「うん!」  離陸した機内で早速『ねぎとうふ』をそのまま食べてみた。普通の竹輪よりもフワフワの食感で、大豆の甘みがほんのり感じられる。 「美味しい!」 「フワッフワね」  一本が結構大きいのにペロッといけてしまったのは、朝ご飯を食べたっきりで空きっ腹を抱えていたせいだろう。豆腐が主原料のヘルシーさに、罪悪感を感じなかったというのもある。 「ああ、優ったら、口の端についてる」  ふいに伸びてきた薫ちゃんの指が私の口元に触れて、とうふちくわの切れ端を取ってくれたかと思ったら、その指をペロリとピンク色の舌が舐めとった。  まるで恋人同士のような仕草にカッと頬が熱を持つ。  薫ちゃんは嫌じゃないのかな? 完全に妹扱いということなんだろうけれど、こっちはドキドキしてどんな顔をすればいいのかわからない。 「ほらね。あんたに恋人のフリは無理。一人で捜索するのも、他の男の恋人のフリをするのも金輪際禁止だからね」  頬をムギュッとつままれて、思わず「痛い」と睨んでみたけれど、なぜか薫ちゃんは上機嫌のままだった。
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