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木製の厚い扉を開けると、カウンターしかない狭隘な店であった。
「いらっしゃ・・うぉっ!!」
神輿の男子が闖入者に叫び声を上げた。
カウンターの内側で、神輿の男子、白肌の男子が上半身裸で、身体の水を拭いていた。
「案ずるでない。わしらは、通りすがりの風神と雷神じゃ」
「な、なにか御用で?! 当店はまだ営業時間ではないのですが」
「構わぬ。邪魔をする。白い美男子は高熱と見たが・・・」
雷神が背負う連太鼓によってドアにぶつかって足掻いている。
「阿呆、体を横にせぬとお主は入れん」風神がこまねく。
「お主達は、どういう関係じゃ」無事に店内に入れた雷神。
「俺は店のオーナーの颯人っす。普段は親の仕事を継いで大工をしているこの店の経営者です」神輿の若者は言った。
「で、こいつが蘭。店のマスターをさせてます。今日はなんだか熱があるようで、俺は家で寝てろっていったのに無理して神輿の見学に来たみたいで」颯人は蘭の頭を撫でる。
「ふーん、蓋し、お主達は互いに慕っておるな」風神はやっかんでいるような声を出した。
「まあ、俺なりに愛してやっています」と颯人。
「くーっ! お主、酒を所望したい、やけ酒じゃ」風神は言う。
「泡盛でよければ」蘭が言った。
「有り難い、蘭とやら、一升飲んだら帰る。今日は帰って休むがいい」
「はい、そうします。上で寝泊まりしてるんで。さ、どうぞ自慢の地酒です」
「グビグビ、プハー」風神の吐く息に張り紙が揺れる。
「ハックション!」蘭がくしゃみをした。
「蘭、お前は休め、上で寝てろ」颯人が言う。
「はい、失礼します」
「オカシイな、今日までは天気予報は晴れって言っていたのに、台風の影響かな」颯人は首を捻る。
「何!? いま台風と申したか?」
「はい」
「すわ! 風神、聞いたか? 南方から龍神さまのお出ましだ」
「なんと! 颶風の神、龍神様の到来か、まずいな、北へ逃げよう」
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