揺らぎ始めた居場所

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揺らぎ始めた居場所

――― 俺、仲本亘は最近考えている事がある。俺にとって『STAR』という存在について。……いや、辻村巧海という存在が俺にとってどういうものであるかを…… 『STAR』というのは俺が所属するバンドの事だ。俺は一応ボーカルを任せられていて、他に四人のメンバーがいる。そして辻村はギター担当で俺の幼馴染だ。 バンドを結成したのは今から十年前で四年間のインディーズ活動を経て、六年前にデビューを果たした。有り難い事にデビュー曲を始めとして今まで出したほとんどの曲がそれなりに売れて、大晦日の国民的歌番組に五年連続で出場。端から見れば順風満帆な日々を送っていると思われているだろうが、俺の心は灰色だ。 俺と辻村、そして他の三人のメンバーは出会ってからもう二十年は経つ。共に色んな事を感じ、色んな事を見て、聞いて、様々な感情や気持ちを共有してきた。 俺にとって『STAR』の存在は心底安心できるとても大切なものであり、自分の心の居場所だった。 しかし、最近その居場所が壊れ始めている。心安らぐ場所だったはずがいつからか心が落ち着かない場所になってしまった。 ずっと変わらないものだと思っていた。俺にとっての大切な場所。 いつからだったのだろう……?俺の気持ちが揺らぎ始めたのは…… .
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