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いつもと違う朝
―――
「ぷはーっ!うまい!もう一杯!」
「仲本君、もうやめなよ。飲み過ぎだって。」
「いいの!飲まなきゃやってられないっつーの……」
ぶつぶつ言いながら自分でビールを注いだ。
ここは俺達がよく来る行きつけの居酒屋。俺はレコーディングが終わってすぐに打ち上げと称して晋太と浩輔を無理矢理引っ張ってきたのだ。隣でつまらなさそうに飲んでいる浩輔を横目に、またジョッキを一気にあおった。
「あぁ~!晋太、注げ!」
「も~う!だから飲み過ぎだってば!明日もレコーディングなんだから、声が出なくて困るのは自分だよ。このくらいでやめときなよ。」
晋太が俺のジョッキとビールの瓶を横取りして生意気にも説教する。俺はぎろりと睨んだ。
「何だよ、お前。俺に意見する気か、あぁ?俺を誰だと思ってんだ。ボーカルだぞ?リーダーだぞ?偉いんだぞ!わかってんのかぁ~!」
「はいはい、わかってますよ。……ちょっと~浩ちゃん。どうにかしてよ、この人。もう俺じゃ手がつけられないって!」
「ほっとけば。気が済むまで飲ませたらいいじゃん。じゃあ僕、そろそろ帰るね。後は頼んだよ。」
「え~!?ちょっと待ってよ!」
「何だよ、浩輔ぇ~!お前もう帰んのかぁ?」
「うん。明日のレコーディングの順番、僕が一番最初なんだ。寝坊するとヤバイからもう帰るよ。」
「まぁじかよ、お前~……もっと飲んでけよ、冷たい奴だなぁ。」
「ごめんね、じゃ。」
俺の絡みにも動じずあっさり断り、浩輔はさっさと帰っていった。
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