19人が本棚に入れています
本棚に追加
―――
「仲本君、僕達を呼び出したのってこの事について話す為だったんだね。」
裕から見つめられた俺は声に出さずに頷いた。
「悪い……今回の事は社長が色々手を回してくれたから良かったけど、もしかしたらこれから皆に迷惑かかるような事になるかも知んねぇ。だからホントごめん……」
そう言いながら俺達に頭を下げる辻村。そんな姿を見ていられなくなった俺は、勢い良く辻村に近づいた。
「仲本……?」
「俺達だっていい歳だ。もうすぐ三十になる男に女の一人や二人いたっておかしくねぇよ。まぁちょっとは名が知れてるけど誰もが知ってるスターやアイドルじゃあるまいし、マスコミに漏れたところで俺らの評判はそんなに変わらない。」
自分で言ってて密かに苦笑する。確かに俺らは国民的アイドルなんかじゃない。ただし辻村は違う。こいつは顔もいいしギターの腕もいい。そのくせそれを鼻にかける事もなく、気さくで誰にでも優しい。そんな奴を世間は放っておかないもので、テレビ番組に出る時は必ず話を振られるし、五人の中で一番ファンが多い。
「だけどな、一人の男としてけじめはつけないといけねぇんじゃないか?責任を取らないといけねぇんじゃないのか?」
「責任……?」
「さっきの話だと今回は記事にならないで済んだようだけど、その彼女にとっては写真に撮られたっていうだけで不安でいっぱいなんじゃねぇのか?ずっと付き合ってくつもりならその子をお前がちゃんと守ってやんねぇと。俺らに謝る前に彼女に謝れ。」
「……そう、だよな。」
辻村が沈痛な顔で俯く。俺は皆を見回して一人一人の顔を見ていった。全員が揃って真面目な顔で俺を見返す。俺は深呼吸するとまた辻村に視線を移した。
.
最初のコメントを投稿しよう!