高鳴る鼓動

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――― 「ここなら誰もいないから……」 着いた所は今は誰も使っていない部屋。それでも晋太は注意深く中に誰もいないのを確認してから入っていった。 「おい、晋太。話って?」 「仲本君。本当にいいの?」 「は?何がだよ……?」 「辻村君の事。」 「辻村!?」 晋太の口から辻村の名前が出てきて、思わずでかい声が出た。 「そう、辻村君の事だよ。仲本君はこの間あぁ言ってたけど、本当はどう思ってんの?」 「どうって……言われてもなぁ。」 俺はチラッと晋太を見た。いつもの笑顔がなく、真剣な顔で俺をずっと見つめている。 二十年も側にいてこいつのこんな真剣で固い表情を見た事があっただろうか。――目を逸らすタイミングが掴めずにずっと晋太と見つめ合っていた。 「ふっ……何そんなに僕の事見つめてんの。」 どのくらいそうしていただろう?晋太の方が先に目を逸らし、いつもの顔で笑う。それを見て俺も小さく笑ってみせた。 「この間さ、仲本君言ってたじゃん。今回の辻村君の事、俺がどうこう言える事じゃないって。」 「あ、あぁ……本当にそう思ってるし俺らマジでいい歳だしさ。辻村にとってはめでたい事なんじゃないの?」 「本当にそう思ってんの?」 疑いの目で俺の事を見る。俺は深く頷いた。 「そっか。ならいいんだ。ごめんね、変な事聞いて。」 「いや、別にいいよ。じゃ戻ろうぜ。」 「仲本君。」 「ん?」 出て行こうとする俺を晋太が呼び止める。俺はドアに向けて歩き出そうとしていた姿のまま振り返った。 「仲本君……」 「何だよ。」 「あのね、僕……」 苦しそうに顔を歪ませながら下を向く。俺は待ちきれずに晋太に近づいた。 「何か言いたい事あるんだろ?言えよ。」 「ううん、やっぱりいいや。先行ってるね。」 「お、おい!」 急に顔を上げて大声でそう捲し立てると、俺の前を勢い良く通り過ぎて行ってしまった。 .
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