第1部 第1話

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「とにかく今はそれどころじゃない。もっと勉強して、知識とか経験を蓄えて、早く一人前になりたい」 「真面目だな。でも、新の場合、周りがほっとかないからなぁ」  再び駅に向かって歩き出すと、新も続く。 「周りは関係ない」  並んだ新の横顔を見ると、その目は真っすぐに前を見据えていた。 「誰に好かれるかはどうでもいい」  その言葉に、一瞬息が止まる。 「多分新は、追われるより追いたいタイプだな」  にやりと笑うと、新は理宇の表情を真似て、「どうだろう」と言った。  同じ電車に乗って、先に新が降りる。 「今日はごちそう様」 「どういたしまして。また連絡すんな」 「うん」  ホームに立つ新に手を振ると、新は笑顔で理宇の動作を返す。  ドアが閉まって、その顔が見えなくなるまで、理宇はニコニコの笑顔を崩さなかった。  電車が走り出して、新の姿が見えなくなると、営業スマイルを張り付けたまま、額をドアにごちんとぶつける。  周囲に聞こえるほど大きな溜息を吐き、早く電車が目的地に着くことを願った。
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