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「違う」
一言つぶやかれた言葉と、自分を射抜くような強い眼差しに理宇は身体を竦めた。
「昔と今は、全然違う」
「……新?」
それはどういう意味なのか、考えようとするけどうまくいかない。
とにかく新から目が離せなくて、頭も身体も動かなかった。
ゆっくりと伸ばされた手が、そっと理宇の頬に触れる。
瞬間、鼓動がひときわ大きく鳴って、肩が小さく跳ねる。
親指の腹が頬骨の上辺りをなぞり、目尻に辿り着く。
理宇は何かを言おうとして、だけど声が出なかった。
「理宇」
少し掠れた声で名前を呼ばれると、心臓からじわりと熱が広がっていくのを感じた。
熱い。身体も、頭も熱くて、のぼせているみたいだ。
どうして新は、そんなに苦しそうな表情で自分を見るのか。
「理宇」
どうして、そんなに切ない声で名前を呼ぶのか。
知らない。
こんな新を、理宇は知らなかった。
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