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「あ、らた……?」
途切れ途切れでどうにか名前を呼ぶと、新ははっとしたように目を大きく開いた。
頬に触れていた指先が、そのまま耳へ移動して、髪を掻き上げる動きで離れていく。
「髪、ちゃんと拭いてないだろ。びしょびしょ」
「え、あ……ごめん。床、濡らしたかも」
新の指摘で我に返った理宇は、肩に掛けていたタオルで乱暴に髪を拭った。
「ドライヤーで乾かしてきたら? 濡れたままの髪は良くないって、理宇いつも言ってる」
「その通り。濡れたままだと髪にも頭皮にも良くないからな」
うん、うん。と大げさに頷き、一歩後ろに下がって新との間隔を広げた。
「じゃあ、ちょっと乾かしてくるわ。あ、晩飯は配達にしよっか。食べたいの考えといて」
「了解」
新が返事したのを確認して、理宇は洗面所へと向かったのだった。
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