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第7話
ひたひたと、素足が床を踏みしめるわずかな音が聞こえた。
薄目を開けると、辺りはまだ真っ暗だった。
新がトイレに起きてきたのかもしれない。
足音は徐々に理宇が横たわるリビングの端へと近づいてきて、慌てて瞼を閉ざした。
じっと見られているような気配に、思わず息を止める。
緊張感に耐えられなくなって身じろぎしそうになった時、じっと佇んでいた影が身をかがめた。
(え、なに……なんだ?)
瞼を開けようか迷っていると、頬にそっと何かが触れる。
それはゆっくりと理宇の輪郭を辿って、やがて唇をなぞった。
「……っ」
その感触に思いがけずわずかに声が出て、冷や汗がにじむ。
「理宇、起きてるよね」
低く抑えた新の声に、びくりと肩が揺れた。
きっと今の反応で、起きていることは新に確実にバレてしまったはずだ。
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