第7話

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「陸上は高校でやり切ったし、大学も今の仕事も、何一つ後悔してないから」  理宇の心情を見透かしたように、新が明るくよどみのない声で告げた。 「そう思えるのは理宇のおかげ」 「え……なんで、俺?」  新が懐かしむように笑って、ゆっくりと理宇のもとへ近づいてくる。 「俺がケガした時、理宇専門学校で忙しかったのに、誰より心配してくれたでしょ。電話もメッセージもいっぱいくれて、ケガを代わってやれたらいいのにって泣いてくれた」 「う……だって、新あんなにいっぱいトレーニングして頑張ってたのにって思ったら悔しくて」 「うん、だから、いいかって思えた」  傍まで来た新がしゃがんで、理宇と同じ目線になる。 「記録に残るような結果は出せなくても、積み上げた努力をちゃんと見て、認めてくれる人がいるんだって思えたから。だから最後やり切って、終わりにしようって切り替えられた」 「新……」
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