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当時はつらくて、悲しくて、きっと新も触れてほしくないと思っていた。だから、励ましや応援を感謝された記憶はあるけど、こんな深い部分の話は今までしたことがなかった。
「俺は本当に、理宇がいないとダメだな」
自嘲するみたいに笑った新の表情が、理宇の心臓を打ち抜く。
(朝からこの顔で、そのセリフはダメだってば!)
リアクションもできず硬直する理宇を、新が見つめる。
その何か言いたげな眼差しは、理宇に数日前の出来事と、さっき見たばかりの夢の内容を思い起こさせた。
「あ……新、ほら、ランニング! 行くんだろ、走りに!」
「え、ああ……うん」
突然叫ぶように促した理宇に、新は驚きながら頷く。
「早く行かないと時間なくなるぞ」
理宇はそう言って立ち上がると、いつもの朝は決して見せない俊敏さで布団を片付け始めた。
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