第7話

10/15
前へ
/416ページ
次へ
(あれってやっぱり……) 「理宇」 (やっぱり、そうだよな……) 「理宇」 「へ?」  肩を軽く叩かれる感触に振り向くと、思ったより新の顔が近くにあって軽くのけぞる。 「こぼしてる」  新に指をさされたは理宇の太もも辺りには、トーストの粉が結構な量落ちていた。 「うわ、ほんとだ、ごめん」 「あと、ジャム付いてる」 「え……あ」  ティッシュを持った新の手が、理宇の口元をぬぐっていく。 「……ごめん」  ぬぐわれた口の端を、無意味に指でこすった。  理宇の謝罪に微笑で応えて、先に食べ終えた新はごちそう様をした。 「理宇はゆっくり食べてて」  そう言って先に席を立ち、出勤のための準備を始める。  その背中を目で追いながら、理宇は重めの溜息を吐きだした。
/416ページ

最初のコメントを投稿しよう!

715人が本棚に入れています
本棚に追加