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「それなら……いいんだけど、うん」
新に負担を掛けているというのが、杞憂であったことにほっとする。
だけど同時に、また新しい懸念が浮かび上がった。
(それじゃあ新のあの言葉は、いったいどういう意味だったんだろ)
意識が思考に傾きかける寸前で、今の状況を思い出す。
「あ、ごめん、仕度してるとこだったのに」
「全然平気。今日はいつもより時間に余裕あるから」
「そっか……あ、じゃあ俺がセットしてやる」
新の返事に安心して、理宇は右手を差し出してドライヤーを要求した。
「ほんと? やった」
無邪気な笑顔を返す新からドライヤーを受け取り、コンセントにプラグを差し込む。
立った状態では身長差で手が届きにくいため、新が膝立ちになってくれた。
シャワー後でまだ濡れていた髪を8割がた乾かして、分け目を決める。
「んー、じゃあ今日は七三のアップバングにしていい?」
「プロにお任せします」
洗面台の鏡越しにおどけて笑う新にキュンとしながら、ドライヤーとブラシを使ってセットしていく。最後に多めのゼリーを手に広げて、後頭部から全体的になじませた。
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