第8話

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 間違っても好きだなんて、言うつもりはなかったのに。  本当に自分でも驚くくらい、勝手に口から滑り出た言葉。誤魔化して事なきを得たが、理宇は少し自分が怖くなってしまった。  10年以上気持ちを抑えて、隠し通してきたのに、あんなにポロッと口に出してしまったことが信じられない。  もう何回目かもわからない自責の溜息を吐く。  多分、距離が近すぎるんだ。  近くにいすぎると、欲が出てしまう。  早く前みたいな距離感に戻って、気持ちにきつく蓋をしなければいけない。  後ろ髪引かれる思いから意識を逸らせて、すっかり冷めてしまったボンゴレビアンコを無心で食べ始めた。
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