第2話

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 くすんだレンガの壁、モルタルの床。天井からはアイアンのペンダントライトがいくつかぶら下がっている。  それほど広くはない室内で、ゆったりと流れるジャズのメロディーを理宇の声が遮った。数人いた客が一斉に出入り口に視線を向ける。 「うるさいな。出禁にするで」  入ってすぐの左手にある木製のカウンターの中から、静かな怒声が飛ぶ。 「雪哉くん」  よろよろとカウンターに近づき、崩れるようにスツールに着座した。 「なに、もう酔うてんの?」  艶のある黒髪を軽く後ろに流した雪哉は、怜悧な印象のする切れ長の瞳を怪訝そうに眇める。細身で小柄に見えるが、黒い開襟シャツから覗く胸元は、しっかりと鍛えているのがわかる。 「飲んだけど、酔ってはない」 「あぁ、そう。明日休みなん?」  理宇が頷くと、雪哉はロングカクテル用のグラスに氷を入れマドラーで回す。そこにカシスリキュールとウーロン茶を注いで掻き混ぜてから、理宇の前に置いた。
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