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◇ ◇ ◇
昨年建て替え工事が完了したばかりの、まだ真新しい駅舎。改札前の端の方で邪魔にならないように立っていると、待ち人はすぐにやってきた。
ラッシュアワーの人だかりで、うまく合流できないかもしれないという理宇の心配は、まったくの無駄だった。
頭一つ抜き出た長身と、周囲とはレベル違いのイケメンオーラで、すぐにその姿を捉えることができた。
「新、お疲れ」
呼びかけて手を振る。理宇を見つけると、新はふわっと柔らかい表情になって、手を振り返す。周辺の女の子たちが、新にチラチラと視線をよこすのが目に入った。
「理宇、ごめん。待たせた?」
急ぎ足で傍に寄ってくる様子が可愛くて仕方ない。
「全然。なんか外で待ち合わせって新鮮でいいな」
デートみたい♡というセリフは、もちろん心の中に留めた。
実家にいた頃は、居住地がほぼ同じだったから待ち合わせる必要がなかった。こっちに出て来てから会う時は、基本的に新が理宇の店に来店という状況だったから外で待ち合わせたことはなかったかもしれない。
嬉しそうに同意する顔も可愛くて、理宇はさらに浮かれたような気分になる。
「えーと、じゃあ行くか。遠い方のスーパーな」
新が了承の返事をしたのを見届けてから、2人並んで歩き出す。
理宇は当初、買い物や食事の準備を自分だけで済ませておくつもりだった。だけど新が、「どうせだったら一緒にしよう」なんて可愛いことを言うものだから、理宇は二つ返事で承諾したのだ。
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