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「そうなんだ。俺も一度行ってみたい」
目を見開き、自身の失言に気が付く。
雪哉を見れば、「ほら見たことか」となんとも言えない顔をしていた。
雪哉が理宇の行きつけのバーの店主だと知れば、話の流れで新がそう言い出す可能性は十二分にある。その上雪哉の作る酒を絶賛してしまえば、自ら墓穴を掘っているようなものだった。
(雪哉くんの言うとおり「あほう」そのものじゃん)
純粋に雪哉の美味しいお酒を、新に味わってほしい気持ちは
ある。だけど、雪哉の店に新を連れていくことは、理宇の秘密を打ち明けることと同義だった。
目に見えて狼狽する理宇に、雪哉が割り切ったような短い息を吐く。
「新くんが来たいって言うんやったら、ウチはいつでもウエルカムやで」
雪哉はそう言ってひらひらと手を振った。
「ほな、俺はこの辺で。楽しい夜を過ごしや、お二人さん」
(うそだろ、ここで置いてくんだ!?)
絶句する理宇にニッコリと笑い、雪哉はそのまま去ってしまった。
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