第8話

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「あの、新……」  名前を呼んだきり、言葉が出てこなくなる。新は黙り込んだ理宇を見て小さく笑った。 「理宇が嫌なら、無理にとは言わないから」  その笑顔は頼りなくて、少し悲しそうに見えた。  新を傷つけている事実に、胸が痛んで、理宇はまとまらない頭のままどうにか言葉を絞りだす。 「嫌とか、そういうんじゃなくて」  結局意味のない言葉しか出てこなくて、自分の不甲斐なさに泣きたくなった。 「俺、理宇の憩いの場を邪魔する気ないから」 「新……」  理宇を慰めるように、新が微笑む。 「そんな気にしなくていいって。軽い気持ちで言っただけだし」  ほら、行こう、と理宇の肩を優しく叩いて、新が先に歩き出す。 (ごめん、新。ほんとのこと言えなくて)  ピンと伸びたその背中に、理宇は心の中で何度も謝罪の言葉を投げた。
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