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そうして泣きながらスライスした丸々一個分の玉ねぎを、皿に敷き詰め鯛の切り身を並べる。その上にベビーリーフを散らして、オリーブオイルと塩かけた。十数分程で完成したカルパッチョは、食べるギリギリまで冷蔵庫に入れておく。
調理台では、塩を振って置いたことによって肉から出た水分を、再び新が丹念にふき取っていた。
グラスや取り皿、他のおつまみをテーブルに用意してから、バケットをトースターに放り込んで、理宇の仕事はほぼ完了した。あとは高級赤身肉が焼かれる様を見守る。
「はぁー、たまりませんなぁ」
じゅーっという食欲をそそる音と香ばしい匂いに、唾液が口の中にあふれた。
新は同意を示すように一度理宇を振り向いて微笑んだあと、肉をジューシーに焼くという重要任務を遂行すべく、フライパンに向き直った。
「強火で焼き色をつけたあと、片面1分半ずつ」
しっかりタイマーで測る新を見て、性格が出るなぁと理宇は笑う。理宇が担当していたら、1分半など感覚で焼いてしまっただろう。
「火を消して、あとは余熱で焼く」
肉の上にアルミホイルを被せる新を見届けて、理宇はステーキ用の皿を取りに行った。
ステーキソースは、精肉店オリジナルのものを購入してある。
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