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「これ、上に引けばいいの?」
スクリュー部分をねじ込んだあと、コルクを抜くのに手間取る新に、理宇が手を伸ばす。
「えーと、ここを引っかけて、こっちをぐいっとしてたような」
ゼニスブルーでの雪哉の動作を思い出して、フック部分を瓶口に引っかけてから、持ち手部分を真上に引き上げる。すると埋まっていたコルク栓が、てこの原理で簡単に上がった。
「おぉ、抜けた」
ほとんどが瓶の中から出たあとは、手で引き抜くことができた。
新がすかさずグラスを用意して、理宇は二人分のワインを注ぐ。
「じゃあ乾杯?」
傾げながら理宇がグラスを少し高く持ち上げる。
「何に?」
「うまい肉に」
新が笑顔で同意を示して、理宇のグラスに自分のものを合わせた。
まずは一口、少量だけ口に含んでみる。
「……あ、美味しいな」
「うん、飲みやすい」
頷き合って、互いにもう一口味わう。
口の中に果実味とほのかな甘みがふわっと広がったあと、舌先にまろやかさを感じる。渋みはほとんどなく、最後にすっきりとした控えめな酸味が残って、口の中がさっぱりする。
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