第9話

6/18
前へ
/416ページ
次へ
「これ、上に引けばいいの?」  スクリュー部分をねじ込んだあと、コルクを抜くのに手間取る新に、理宇が手を伸ばす。 「えーと、ここを引っかけて、こっちをぐいっとしてたような」  ゼニスブルーでの雪哉の動作を思い出して、フック部分を瓶口に引っかけてから、持ち手部分を真上に引き上げる。すると埋まっていたコルク栓が、てこの原理で簡単に上がった。 「おぉ、抜けた」  ほとんどが瓶の中から出たあとは、手で引き抜くことができた。  新がすかさずグラスを用意して、理宇は二人分のワインを注ぐ。 「じゃあ乾杯?」  傾げながら理宇がグラスを少し高く持ち上げる。 「何に?」 「うまい肉に」  新が笑顔で同意を示して、理宇のグラスに自分のものを合わせた。  まずは一口、少量だけ口に含んでみる。 「……あ、美味しいな」 「うん、飲みやすい」  頷き合って、互いにもう一口味わう。  口の中に果実味とほのかな甘みがふわっと広がったあと、舌先にまろやかさを感じる。渋みはほとんどなく、最後にすっきりとした控えめな酸味が残って、口の中がさっぱりする。
/416ページ

最初のコメントを投稿しよう!

716人が本棚に入れています
本棚に追加