第9話

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(あ……ヤバイな。マジで酔ってるっぽい)  いつもなら新の綺麗な顔が至近距離にあると、動揺して逃げたくなったり、危機意識が働いて回避しようとしたりするのに。今はそれよりも、もっと新を見つめたり、触れたりしたいという欲望が勝ってしまう。 「耳まで赤くなってる」  からかうように触れてきた新の指に、ぞくりと背筋が震えた。もっと触れて欲しいという欲求が湧く。その接触に何も特別な意図はないのに、熱っぽい感情が含まれているような錯覚がして、さすがにまずいと感じる。 「このワイン何度あんだろ」  空になったボトルを取る仕草で、新と距離を取った。  ラベルの表示を確かめていると、横から新が「ここ」と指を差す。 「10度か。軽めって言ってたけど、やっぱワインだし結構あるんだな」 「ビールが5度くらいだっけ?」 「うわ、そら酔うよな。いつも飲んでるやつの倍くらいってことだろ?」  理宇同様に、新が普段注文するのはビールやサワーなどで、強い酒を飲んでいるのは見たことがない。
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