第9話

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(やばいやばいやばい。どうしよ)  焦る理宇とは対照的に、新が落ち着いた声で告げる。 「やっぱり度数強かったみたいだね。足にもきてるし」 「え? あ、はは、そうみたい。ごめんな」  異様な心拍数はアルコールのせいだと解釈され、安堵の息をついた。 「そういえば、どうしてピンクちゃんなの?」 「へ?」  途切れない緊張と、唐突な質問に声が思い切り裏返る。 「スーパーで呼ばれてた」 「え、ああ。雪哉くん?」 「うん。ずっと気になってた」  耳に熱い吐息が掛かるたび、理宇は小さく肩を竦めた。 「最初に会った時、俺の頭がピンク色だったからだよ」 「じゃあ結構長い付き合いなんだ」 「え?」 「理宇がピンクにしてたの、もう5年くらい前でしょ」 「そんなのよく覚えてんな」  昔の理宇はしょっちゅう髪色を変えていた。頻繁過ぎて自分でもいつ何色にしていたのかも定かではない。それなのに時期まで正確に覚えている新の記憶力に感心する。 「よく覚えてるよ、可愛かったから」  その瞬間、悲鳴をあげなかった自分を褒めてやりたいと理宇は思った。
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