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(やばいやばいやばい。どうしよ)
焦る理宇とは対照的に、新が落ち着いた声で告げる。
「やっぱり度数強かったみたいだね。足にもきてるし」
「え? あ、はは、そうみたい。ごめんな」
異様な心拍数はアルコールのせいだと解釈され、安堵の息をついた。
「そういえば、どうしてピンクちゃんなの?」
「へ?」
途切れない緊張と、唐突な質問に声が思い切り裏返る。
「スーパーで呼ばれてた」
「え、ああ。雪哉くん?」
「うん。ずっと気になってた」
耳に熱い吐息が掛かるたび、理宇は小さく肩を竦めた。
「最初に会った時、俺の頭がピンク色だったからだよ」
「じゃあ結構長い付き合いなんだ」
「え?」
「理宇がピンクにしてたの、もう5年くらい前でしょ」
「そんなのよく覚えてんな」
昔の理宇はしょっちゅう髪色を変えていた。頻繁過ぎて自分でもいつ何色にしていたのかも定かではない。それなのに時期まで正確に覚えている新の記憶力に感心する。
「よく覚えてるよ、可愛かったから」
その瞬間、悲鳴をあげなかった自分を褒めてやりたいと理宇は思った。
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