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運ばれたのは、居候初日に一度だけ入った寝室のベッドの上だ。新は理宇をそっと下ろして、ブランケットを身体の上に掛ける。ベッドライトを灯して、自分もその隣に身体を横たえた。
向かい合う体勢で見つめ合う。
「理宇、ずっとここにいればいいのに」
新の言葉がぽつりと落ちる。
「俺がいなくなったら、寂しい?」
「うん、寂しい」
新は素直に答えて、再び理宇に身体を寄せてくる。
今度こそ逃げようと思ったけど、できなかった。縋るように自分を見る悲しそうな瞳を、突っぱねることなど無理だ。
「まったく。新は酔ったらこんなに甘えたモードになるのか? 外での飲みは気を付けないとだな」
胸元に顔をうずめてくる新に、どうにか動揺を押し殺して声を掛ける。
「他の人にはこんなことしない」
「……え」
それは一体どういう意味だと訊けないまま硬直していると、新が額を擦り付け、理宇の腰を抱き寄せる。
「いくら酔ってても、誰彼構わずこんなことしない。理宇以外、するわけない」
こんなのもう殺し文句だ。
すでに酔っている頭がくらくらして、胸がぎゅうっと締め付けられる。
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