第2話

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 新に対して抱く感情が、単なる親愛の情を逸していると気づき始めたのは中学に入学した辺りで、思春期真っ盛りを迎える頃にはっきりと自覚した。  中学では形だけの美術部に所属していた理宇は、2年まではほぼ帰宅部だったにもかかわらず、3年になると毎日部室に通った。筆も持たず、美術室の窓から陸上部の練習ばかり見ていた。 グラウンドのどこにいても、新の姿ならすぐに見つけられる。  太陽の下でひたむきに練習する新の姿は、ずっと見ていても飽きなかった。 そうして陸上部が練習を終える頃にグラウンドへ向かって、新と一緒に帰宅するのが常だった。  並んで歩くと浮かぶ影法師は、すでに新の方が高い。 「今度理宇が描いた絵見せて」  理宇が真面目に部活動に励んでいると思っている新が、そんなことを言い出す。 「無理、恥ずいからダメ」  本当は何も描かないまま、ただ新を見ているなんて、絶対に言えない。
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