第10話(前半)

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 だけど今、理宇にそんな余裕はない。  早く新と離れたいと思ったのは、初めてのことだった。  今までどれだけ苦しくても、そんな風に感じたことはなかったのに。  自分の欲求が、新を大事に想う気持ちを今にも超えてしまいそうになっている。  そのことを自覚したら、平気な顔をして新の隣りにいられなくなってしまった。 (一旦、リセットしないと。距離と時間置いたら、また今まで通りにできる)  今まで抑え込んできた気持ちが暴発しそうな危機感と、新を裏切っているような後ろめたさ。そして、新の幸せを一番に考えてやれない自分に対する嫌悪感。  それらを抱えながら、理宇は祈るような気持ちで残りの数日を過ごした。
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