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部屋の中には、スパイスのいい匂いが漂っている。
理宇が新の部屋に泊まり始めてすぐの頃、新がカレーを作って帰りを待ってくれていた。
嬉しくて、仕事の疲れも吹き飛んだ。
新と一緒に食べる食事が美味しくて、何気ない会話が幸せで……単純にそんな風に思える日々に戻るには、早く自分の部屋に帰らないといけないのに。
自分の行動に溜息を吐いた時、玄関の扉を解錠する金属音が聞こえた。
理宇はソファから立ち上がって、玄関へ向かう。
やがて扉が開いて、玄関の照明が自動点灯した。
「お帰り、新」
新は出迎えた理宇を見ると、ひどく驚いた顔をして立ち尽くした。
「理宇、なんで?」
「ごめんな、勝手にまだいて」
「いや、それは全然いいんだけど」
まだ驚きが抜けていない様子の新の手を取って、室内へと促す。
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