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「ほら、疲れてるだろ。風呂いつでも入れるように準備して、メシ作っといたから」
すっきりとしたリビングに入ると、新の腕を解放する。
「ありがとう、でも……どうして」
「ん? なんかさ、最後に「お帰り」だけは言ってやりたいなって」
荷物をまとめて、元通りになった部屋。
帰宅した新がそれを見た瞬間を想像したら、きっと悲しい気持ちになると思った。
あんなに寂しがっていた新を、今夜どうしても誰もいない部屋に帰させたくなかった。
「じゃ、今度こそ帰るわ」
片手を上げて、軽い口調で宣言する。
「一緒に食べていかないの?」
「だめだめ。一緒にメシ食ってまったりしたら、結局帰るのダルくなっちゃうだろ」
「本当に、お帰りって言うためだけに待っててくれたんだ」
「そ。新が寂しくて泣いちゃわないように。これもお兄ちゃんの務めだな」
おどけて言って、明るく笑って。新の横をすり抜けて玄関を目指す。
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