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「ちょ、あ、らた……どした?」
上擦った声で呼んで、回った腕を軽く叩く。
返事の代わりに腕の力が強くなって、理宇の体温がぶわっと上昇する。
「なんだよ、俺が帰るのそんなに寂しいのか?」
腕を掴んで揺すぶっても返事はなく、縋るように理宇の首筋に顔を埋めてくる。
新の髪が頬や首の柔らかい皮膚に触れて、理宇の肌が粟立った。
「こら、新、わかったから、一旦放せって。な?」
このままではちゃんと思考が結べなくて、とにかく物理的な距離を取ろうとする。
それでも新は応じなくて、理宇は内心パニックに陥った。
(心臓、壊れる。意識飛びそう)
心臓が鳴り過ぎて、耳鳴りがしている。
取り繕う余裕はもはや残っていなくて、どうにか新の腕から逃れようともがいた。
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