第10話(前半)

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「ちょ、あ、らた……どした?」  上擦った声で呼んで、回った腕を軽く叩く。  返事の代わりに腕の力が強くなって、理宇の体温がぶわっと上昇する。 「なんだよ、俺が帰るのそんなに寂しいのか?」  腕を掴んで揺すぶっても返事はなく、縋るように理宇の首筋に顔を埋めてくる。  新の髪が頬や首の柔らかい皮膚に触れて、理宇の肌が粟立った。 「こら、新、わかったから、一旦放せって。な?」  このままではちゃんと思考が結べなくて、とにかく物理的な距離を取ろうとする。  それでも新は応じなくて、理宇は内心パニックに陥った。 (心臓、壊れる。意識飛びそう)  心臓が鳴り過ぎて、耳鳴りがしている。  取り繕う余裕はもはや残っていなくて、どうにか新の腕から逃れようともがいた。
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