第10話(前半)

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「なぁ、放して」  巻き付いている腕を剝がそうとすると、拒むようにさらに強くなった。 「理宇が、好きだ」  その声は、喉奥から絞り出すような音だった。  動きを止めた理宇の肩を新が掴む。引かれて身体を反転させた理宇は、よろけて背後の扉にもたれかかった。  新の顔は今にも泣き出しそうなのに、瞳だけが燃えているみたいだった。その瞳はまっすぐに理宇を捉えたまま揺らがない。 「理宇のことが好きなんだ、ずっと」  言葉の意味はわかるのに、何が起きているのかがわからなかった。 「え、……あ、知ってる……言わなくても、そんな……」 「そうじゃなくて」  しどろもどろに答える理宇を、新の強い声が留める。
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