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「だけど……、一度でいいから……少しでいいから、俺のこと、そういう風に考えみてほしい」
「あ、らた……」
かすれた声がようやく出たのに、それ以上言葉にならなかった。
「俺は男だし、年下だし、理宇からして、ありえないだろうけど、でも……お願い」
必死に訴える眼差しに、ぎゅうっと胸が痛くなる。
「絶対無理だと思ったら、言って。そしたら……ちゃんと諦めるから。ただの幼なじみで弟で……ちゃんと元通りにするから」
強張った笑顔に、涙が出そうになった。
新はそこまで言うと、再び深呼吸をする。
「いつかちゃんと伝えようって思ってて、でも言うのはもう少し先のつもりだった。もっと自立して、理宇みたいなしっかりした社会人になってからって」
新の声は、悔しさが滲んでいるようにわずかに低くなった。
「だけど、我慢できなかった。この一カ月、理宇といる時間が幸せで、ずっと続けばいいって、この場所を誰にも取られたくないって思った」
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