第10話(後半)

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 修学旅行土産のグラスを、ずっと宝物のように使ってくれていた。それが新のために作られたものだと知ったら、とびきり嬉しそうに笑ってくれた。  どんな些細なことでもいいから、理宇の話をすべて聞きたいと言ってくれた。  裸を見せるのなんて今さらだと流そうとした理宇を、昔と今は違うと否定した。  苦しそうな顔で、切ないような声で名前を呼んで、理宇に触れた。  縋るように抱きしめて、理宇以外にはこんな真似はしないと、ちゃんと言っていた。  これまでの色んな新が浮かんで、胸が熱くて、締め付けられるみたいだ。 『理宇のことが好きなんだ、ずっと』  衝撃が強くて、心がついていかなくて、脳が無意識に思い返すことを拒んでいた場面を、ぎゅっと目を閉じて再生する。 (ずっとって、いつから?) 『もう気持ちが抑えられなくて』 (ずっと、我慢してた?) 『一度でいいから……少しでいいから、俺のこと、そういう風に考えみてほしい』 (あの時、新の手も、声も、震えてた。……今にも泣きそうな顔してた)
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